ビッグモーターでの退職強要は他人事ではない!
ビッグモーターでの退職強要
最近、ビッグモーターで解雇対象となった社員を、どのようにして自主退職に追い込むのか。その手口について元社員が語った記事を読みました。人員削減のため、会社が「使えない」と判断した社員を、自主退職という形で追放する方法が書かれていました。
そもそもクビにする客観的事実や理由もないのに「自主退職」に追い込むこと自体が不当解雇であり、労使トラブルや訴訟になりやすいです。まともな会社ならばこうした手段は取りません。
記事によると、ビッグモーターでは過去3年半で1万5千人の人が自主退職していったそうです。もちろんこの中にはビッグモーターに入社後、そのブラックな企業体質に嫌気がさして辞めた人が大部分だと思いますが、中には勤務歴が長くても泣く泣く辞めていった人もいたと思います。
解雇対象にされたのは、営業成績が悪い人。本部や上司の指示に従わない人。上司から嫌われた人などですが、例の「環境整備点検」当日、髪の毛が茶髪だったり、挨拶ができていないことを理由に即日解雇された例もあったようです。
環境整備点検は社内で「クビにする社員を見つけるイベント」と言われていたそうです。この場合、解雇予告手当は支払われたのでしょうか?
元社員の語った内容には、どうしても退職を拒む社員には引っ越しを伴う遠方の店舗への配転を命じたそうです。こうすると家族のいる社員は泣く泣く自主退職していったそうです。血も涙もないブラック企業ですね。
学習塾での労組結成の発端は退職強要
ところで、学習塾の職場でも退職強要はもちろんあります。21世紀に入って間もなく、大手学習塾でもリストラが横行した時代がありました。主な対象となったのが入社して10年~20年が経過した40代前後のベテラン社員です。
なぜこの時期にベテラン社員のリストラが行われたのか? それはベテラン社員の「賃金」が高かったからです。当時のベテラン社員は、学習塾の売上や利益が右肩上がりだった80年代後半~90年代初頭に学習塾に入社したので、給与面では「おいしい」思いをしてきた世代なのです。
ところが21世紀に入り、第3次ベビーブームが起きず、塾業界の売上や利益が今後減少していくことが確定すると、こうした賃金の高い人をどうするかという問題が出てきました。
そこで、ベテラン社員のリストラが実施されます。ある日突然、本社に呼ばれ、役員4~5人で囲んで圧迫面談し退職願を強要して自主退職に追い込みます。
理由は「うちでは仕事がないので他へ行ってはどうか」「校舎売上が目標より低い(実際は全校舎平均以上)」「パワハラの噂がある(パワハラの事実なし)」「周りの人全員から嫌われている」「顔が怖い」という客観性からはほど遠いコジツケ的な内容が多かったですね。
こうした有無を言わせない退職強要を受けた人の中には、泣く泣く辞めていった人もいたと思いますが、こんなアホな理由で会社を辞めさせられるのかと、会社の仕打ちに怒った人がユニオンに加入し労働組合を結成し、団体交渉と争議行為により会社に退職強要を撤回させました。
結果として、鈴鹿英数学院(eisu)、ワオ・コーポレーション、ウィザスの職場で労働組合ができました。これら3社での労組結成の発端は、すべて社員への退職強要が理由(ウィザスは幹部のパワハラも理由)なのです。
数人の本社役員で囲んで圧力をかければ、簡単に自主退職に追い込めると思ったんでしょうが、かえって会社にとって都合の悪い結果を招いてしまいましたねww
退職強要の理由や手口はどこも同じ
では、退職強要の対象になりやすい社員はどのような人なのか? 一般的には「仕事ができない人」「業務成績が悪い人」「中高年の人」だと思うかもしれませんが、必ずしもそうとは限らないです。
ビッグモーターでも「ゴルフを愛する人」や「経営陣や管理職のお気に入りの人」「経営陣や管理職の太鼓持ちに徹することができる人」「理不尽な命令にも文句を言わずに従える人」などは、営業成績が並み以下でもクビの対象にはならなかったそうです。
つまり経営陣や管理職が「気に食わない」「わが社に合わない」と思った人はすべて退職強要の対象になり得るのです。ワンマン経営者による強権支配が行われている会社では、特にこうしたことが起こる傾向にあります。
本当のところ、会社が従業員に退職を強要するのは、経営陣や管理職が、その人を「気に食わないので職場から追放したい」という極めて主観的・感情的な理由であることがほとんどなのです。
ビッグモーターでは、自主退職を拒む社員に対して、引っ越しを伴う遠方の店舗への配転を命じたそうですが、これと同じような手口も塾業界では昔から使われています。
辞めさせたい人を、通勤時間が片道2~3時間かかるような遠方の校舎に配置転換させ毎日通勤させる方法です。複数県にわたって校舎展開している大手塾ではたびたび見られます。気に入らない社員を退職に追い込む理由や手口はどこの企業でも同じだと思います。
今後、学習塾業界においては、出生数の減少により市場のシュリンク(縮小)がますます進んでいきます。良い話ではないですが塾業界ではこれから30代以上の社員への退職強要が増加していくだろうと私たちは想定しています。
会社の理不尽な退職強要に対抗するため、また退職するにしても退職金の増額など条件交渉を有利に進めるためには、全国の学習塾の職場に労働組合を増やすことが必要だと思っています。
教育業界で働くみなさん。皆さんの職場では退職強要の事例はありますか?
情報提供やご意見、ご相談などがあれば掲示板への投稿をお願いします。
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