泣き寝入り・転職・闘争 労働者の3つの選択

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私たちは全国の学習塾で働く人や、専門学校や私立学校に勤務する教員の方との情報交換や交流を図ってきました。そして各地の学習塾や私立校での労働条件や職場環境について知ることができました。

他の職場のさまざまな労働環境を知るにつけ、改めて思ったのは『経営者の考え方次第で職場はブラックにもホワイトにもなる』『経営者の性格・思考や行動様式が職場の労働環境を決定する』ということです。

職場の労働環境は経営者次第!?

私学・学習塾を問わずワンマン経営者の権力が強いところほど、職場でのやりがい搾取による長時間労働やサービス残業、一方的な賃金カット、報復人事、パワハラ、退職強要、雇止めなどのブラック労働が発生しています。こうした職場では労使対抗型の労働組合が存在せず、昔から経営者のやりたい放題がずっと続いているところにも特徴があります。

こういう職場で働いている限り、真面目に働いても労働者が報われることは絶対にないでしょう。ワンマン経営者に取り入ってイエスマンに徹すれば出世できるかもしれませんが・・

ブラック企業のワンマン経営者はその取り巻き連中も含め『労働組合』というものが大嫌いですね。社員が外部のユニオンに加入したことがわかると、会社ぐるみで潰しにかかります。

労働者はそれを恐れて会社(経営者)の方針、それが労働基準法に違反していても、労働者の権利を踏みにじるものであっても、精神疾患や過労死に追いつめられる可能性があったとしても、ひたすら従順に、唯々諾々と従ってしまうのが残念ですが現状だと思います。

自分が働く職場がそうしたブラック企業なら、さっさとまともな企業を探して転職するという選択もあります。ブラック労働によって自分の精神や健康がこれ以上破壊されるのを避けるためには「職場を変える」のも有効な手段の一つだと思います。

しかしこれはブラック企業のワンマン経営者にとってまさに心の底で願っていることなのです。なぜなら労働者が短期間で入れ替われば人件費を安く抑えられるし、職場の環境や労働条件の改善を訴え、自分に反抗する社員などワンマン経営者にとっては最も不必要な人間だからです。

このような社員は自分の会社から早々に出て行ってくれたほうがマシで、また何も知らない労働者を新しく安い賃金で雇えばよいと考えます。こうして労働者の使い捨てが何年にもわたって繰り返され、そのあいだに職場環境や労働条件はどんどん悪化し、現場は疲弊していきます。

『劣悪な職場から逃げる』ことには、いろいろな意見があるでしょうが、誰かがどこかの段階でこの負の連鎖を断ち切らないと、ブラックな労働環境に追い詰められる被害者がこの先何年にもわたって増加していきます。

労働者の3つの選択

皆さんは今から10年ほど前に『ダンダリン 労働基準監督官』というドラマが放送されていたのをご存じでしょうか。

労働基準監督署を舞台に主人公の段田 凛(だんだ りん)という労働基準監督官(主演は竹内結子 好きな女優さんだったのでお亡くなりになった時はショックでした)が、他の監督官たちと協力して労働基準法や労働安全衛生法などの労働法に違反するブラック企業を摘発し、不当な扱いを受ける労働者の立場を守っていくお話でした。他に北村一樹、松坂桃李、トリンドル玲奈も出演していましたね。

ちょうどeisuユニオンが会社と本格闘争していた頃で、ほぼ毎日のように労働基準監督署に出入りしていたので、『監督署はこんな対応はしない』『監督官が労基法違反で経営者を逮捕することはない』『監督署はこんな臨検はしない』などとツッコミを入れながら楽しく見ていました。

ドラマなので当然脚色はあるだろうし、実際はこうだ!と文句を言っても仕方ないですが、労働基準監督署の監督官を主人公にしたTVドラマはそれまでなかったので、ある意味新鮮で興味深く見ることができました。

このドラマで扱われたテーマは『名ばかり管理職問題』『新卒内定者へのブラック研修』『外国人技能実習生問題』『上司のパワハラ・セクハラ』『労災隠し』『契約社員の個人事業主扱い』など、今も普通に起きている労働問題ばかりです。

ところで、このドラマの第8話で、主人公の段田凛が労働者たちに言った次のセリフが今でも記憶に残っています。ここには労働者にとっての3つの選択肢が明確に示されています。

『皆さん一言言わせて下さい。会社が嫌なら辞めればいいじゃないかとよく簡単に言う人がいます。あるいは(今の待遇を)我慢するか会社を辞めるか、会社員にはその2通りの選択肢しかないとおっしゃる方もいます。

でもそれは間違いです! 本当は3つ目の選択肢があるんです。それは(会社に対して)言うべきことは言い、自分たちの会社を自分たちの手でより良いものに変えていくという選択肢です。

労働基準法第1章第1条 労働条件は労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべきものでなければならない!』

『一つは今の労働条件を受け入れ我慢して働くこと。もう一つは会社を辞め、もっと条件の良い会社に入りなおすこと。ほとんどの人はこのどちらかを選ぶ。しかし、その会社で働き続けながら職場環境や労働条件を改善していくという3つ目の選択肢があることを多くの労働者に気づいてほしいのです』

第3の選択をする労働者が増えれば・・

ブラック企業のワンマン経営者が最も喜ぶのは、労働者が第1の選択をすることでしょう。第2の選択でも新しく労働者を雇えば済むので経営者には何のダメージもありません。

経営者にとって最も厄介なのは、労働者が第3の選択をした場合です。これを選んだ場合、実際には職場での労働組合の結成と組合活動(争議行為も含む)が前提となります。

このドラマの中ではなぜか『労働組合』についてはまったく触れられていません。前述の段田凛のセリフ中での第3の選択も、ドラマでは『会社を良くするには監督署の役割が重要だ」「社員が会社と交渉するためには監督署にぜひ相談を」という文脈で使われていたように思います。

ドラマの主題が労働組合ではないので理解できますが、それにしても少しは触れてほしかったです。もしかしたらスポンサーへの配慮等があったのかもしれませんね。

ところで、労働基準監督署の本質は労働基準法など労働諸法規を会社(経営者)に守らせることです。そういう意味では必ずしも労働者の味方ではありません。実際には労働基準監督署ができることは限られており、私たちは労働基準監督署の役割を認めつつ冷静な目でとらえています。

したがって、ドラマでは描かれていませんが、第3の選択を労働者が選び、それを実効あるものにするためには、労働基準監督署への相談と同時にユニオン(一般労働組合)に加入し、ユニオンを通した団体交渉で会社(経営者)と交渉する。場合によっては争議行為を実行することが最も効果的なのです。

近年、私立の学校法人で、教職員への長時間労働・残業代未払い・雇止め・校長のパワハラなど、ブラックな職場環境を改善するため、教職員の一部がユニオンに加入し闘争するというニュースがマスコミに取り上げられることが多くなってきました。

もし、「人を教える」職に就く労働者が第3の選択、つまりユニオンに加入し働き続けながら会社と交渉することを選んだ場合は、当事者である労働者にとって、ある程度のリスクは覚悟しなければなりません。

しかし何かを本気でやろうとすれば、リスクを取らなければ成果を得られないのは常識でしょう。劣悪な労働環境に置かれていても、『そのうち誰かが何とかしてくれるだろう』『今我慢すれば、いつか良くなるだろう』と思うのは勝手ですが、客観的な根拠や事実もないのに『いつか良くなる』のを辛抱強く待つことは無意味です。

私たちは、この『第3の選択』を自ら進んで選び取る労働者が全国の企業や職場の中でどんどん増えていけば、ワンマン経営者に対抗し、ブラックな職場環境や労働条件を抜本的に改善し、労働者の権利を拡大していくための大きな力になると確信しています。

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