パワハラが起こる職場の特徴(後編)

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『パワハラが起こる職場の特徴』の続きです。最初から読む場合は前編からお読み下さい。

パワハラは部下への「行き過ぎた指導」だとよく言われますが、「指導」と「パワハラ」を明確に区別するのは困難です。もしパワハラを受けた場合には客観的な証拠となる録音記録やメール文などをしっかり保存しておくことが大切です。

さて、パワハラが頻繁に起こる職場には、ある共通する特徴があります。前編の続きになりますが、それらの特徴を見ていきたいと思います。

パワハラが起きやすい職場の特徴

■上意下達の企業文化がある

体育会系で、経営者や幹部社員、上司の命令には絶対服従で、どんなに理不尽かつ違法な命令・指示でも逆らってはいけないという企業文化が刷り込まれた職場でも、パワハラが起こりやすいと言えます。こうした職場では「上」の人間にうまく取り入り好かれることがその職場で生き残る条件です。ビッグモーターの職場環境からも理解できると思います。

それができない人はその職場に不適格な人とみなされ淘汰されます。その過程でパワハラやいじめが発生します。またこうした職場では日々高いストレスを感じながら働く人が多く、ストレスのはけ口として、職場の企業文化に染まらない人を標的にしたパワハラやいじめが発生しやすいと言えます。

■多様な視点や価値観を認めない

組織である以上、会社の方針や考え方を社員が理解し、同じ方向を見て努力する、というのが理想です。しかし「会社の方針・理念」を重視するあまり、世間一般の常識や規範よりも「社内の常識・規範」が優先されるケースがあります。まさにビッグモーターがそうですね。

前編に書いたように、社内の評価基準が曖昧で、部下の評価が上司の判断に委ねられている職場では、結局のところ、上司が「(自分の考える)会社の方針や理念に従って行動しているかどうか」で部下を査定する傾向が強まります。

そうなると「会社の方針・理念」が唯一無二の価値観となり、それ以外の視点や考えはすべて異端で、社内から排除すべき対象となります。ビッグモーターの経営計画書にも”仕事の能力が高くても、会社の方針に従わない人は、すぐに辞めてください”と書いてありましたね。

多様な視点や価値観の違いを尊重しない職場では、偏見や差別が生まれやすくなります。これに排除の理論が加わると、社内で「魔女狩り」のようなことが行われ、その段階でパワハラ等が起こりやすくなります。

■社内の「風通し」が悪い

複数の業態が社内にある。複数の部門に分かれている。複数のエリアがある。複数の事業所がある。このような場合、他の部門や部署の社員が何をしているか、どのような扱いを受けているか、ということが分かりにくくなります。

特に異なる部門・エリア・事業所間での、社員同士のコミュニケーションや情報共有もない場合は、ある部門や部署でパワハラなどの問題が発生しても、その職場以外の人は知らないことがよくあります。そうした職場では、幹部会議などでも「現場がどんな状況か」「現場社員の声」などが共有化されることはありません。

社内の情報共有(つまり風通し)が悪いと、たとえば特定の部門や部署のトップ幹部の言動が他には伝わらないため、しだいにその幹部の独裁が強まり、その部門・部署内では、幹部のやりたい放題、言いたい放題になるケースがあります。

でも社内での情報共有がないので、その部門で働く社員の声や、実際の状況が明らかになることは決してないし、隠ぺいも簡単なので、その幹部の独裁はますます強まり、部下へのパワハラが起こりやすくなります。過去に、私たちも実際に経験した事例です。

■社内通報制度が機能していない

ワンマン経営者や経営幹部の独裁が行われており、従業員が違法行為や不正を報告することが難しい職場では、パワハラ被害者が声を上げることが難しくなります。

もし、社内で上に意見をする仕組みや、通報するような社内通報制度の仕組みがあっても、報告者や通報者が誰であるか等の秘密が担保されないと、会社からの報復を恐れ、問題があっても報告が上がることはありません。そのため問題がより大きくなっていく可能性が高まります。

会社の社内通報窓口に通報した結果、解決どころか会社から報復された事例もあります。これは当労組が集めた多くの事例からもわかることです。あくまで個人的見解ですが、社内で発生した問題を、社内通報制度を使って相談・通報することはお勧めしません。

なぜなら会社としては、問題が明るみになることなく、事態を解決することを理想とするからです。そうであれば、社内の問題を是正することも、パワハラを受けた人を救済することも、最優先にする必要はありません。「なかったこと」にするのも「解決」だからです。

■パワハラについての教育、意識の不足

法律の改正によって、企業によるハラスメントについての教育を行うことが義務付けられました。これにより、パワーハラスメント以外にも、ハラスメント全般に関する認知度は高まっています。

しかし、ここにも会社ごとに濃淡があります。しっかりとハラスメント等の研修をおこなっている会社がある一方、まったく何もやっていない会社もあります。

パワハラに関する認識を高めるトレーニングや教育プログラムがあっても徹底されていない、内容が不充分な場合は、パワハラについての教育研修があったとしても、問題が発生することになります。

パワハラをなくすには

パワハラが起こりやすい職場の特徴をいくつか挙げてきましたが、パワハラが日常的に発生する会社は、ブラック労働が蔓延する高ストレスの職場であり、会社の体質も歪んでいることが多いのです。誰もが日々ストレスを感じているので、はけ口としてパワハラや職場いじめが起きやすいと言えます。

私たちが直接経験したことを踏まえると、パワハラの最大の要因は、劣悪な職場環境、長時間・低賃金労働などの過酷な労働条件、会社の組織体制などと深く関係していることが多いです。パワハラをする人の性格・行動・考え方・部下との関係性などは要因の一部に過ぎません。

もし、社内でパワハラが発生しても、会社は対外的なイメージダウンを恐れるあまり、自社にパワハラが存在することを容易に認めようとしません。たいていは上司と部下の関係性にスリカエられることが多いです。よく言われる「行き過ぎた指導」というのがそれです。これは職場の労働環境の問題を単なる人間関係の問題に矮小化してしまうことで起こります。

これではパワハラはなくなりません。もっと本質的な要因を解決するべきです。もしパワハラをなくしたいのであれば、社内の労働環境を整備改善し、社内のコミニュケーションを活発にし、そこで働く人がストレスなく仕事ができるようにする必要があります。

つまり職場環境や組織の改善にはまったく手を付けず、あくまでパワハラの要因を個人対個人の人間関係に見出すことは的外れなのです。

 

職場でのパワハラ、セクハラ、いじめ等で悩んでいる方がいれば、掲示版にご意見を投稿下さい。

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