入社するとヤバい会社の見極め方③
現在、25年度入社に向けた就職活動中の就活生。または転職活動中の皆さんへ。
入社するとヤバい会社の見極め方の第3回目です。リクナビ・マイナビ等の求人サイトに掲載されている各社の求人情報、採用データのどこをチェックすべきかを説明していきます。職場の労働環境がブラックかどうかを見極めるポイントです。
求人データのココをチェック PART2
有給休暇・その他の休暇制度
年次有給休暇(年休)は労働基準法で認められた労働者の権利で、正社員の場合、入社半年経過後に10日付与され、その後勤続年数に応じて付与日数が増えていき、入社して6年半が経過すれば年間20日付与されます。付与された年度に使い残した有休日数は最大20日まで次年度への繰り越しが認められます。
また有給休暇は正社員だけでなく、労働日数や労働時間に応じてパート、アルバイト、契約社員などにも付与されます。そして現在、労働基準法では、雇用するすべての従業員に年休を5日消化させることが、会社に義務付けられています。
求人サイトで有給休暇制度の記載がない場合や、単に「あり」と記載されている場合は注意が必要です。この部分は、その会社の経営者が社員のワークライフバランスをしっかりと考えているかどうかが如実に表れるからです。
記載がないのは論外ですが、「あり」とだけ簡単に記載されている場合でも、入社したらまったく有休が取れない・取らせてもらえないブラックな職場である可能性が高いです。
そこで有給休暇以外に、たとえば育児休暇、介護休暇、慶弔休暇などの休暇制度の有無をチェックします。同時に社員の有給休暇の取得率平均や育児・介護休暇の取得率の記載の有無もチェックします。
会社が求人サイトで自社の職場環境をアピールする場合、社員の採用を真面目に考えていれば本来こうした部分についても記載するはずです。特に少子高齢化の進む現代では育児や介護休暇の無い会社など考えられません。
したがって、求人サイトに掲載された有給休暇を含む各種の休暇制度について、説明が曖昧だったり、社員の取得率などのデータが記載されていない場合は、その会社への入社は避けたほうがよいです。
労働時間制と時間外手当
労働基準法では1日あたりの労働時間は8時間まで、週あたりの労働時間は40時間までと規定され、これを超える場合は時間外手当(残業代)の支払いが必要となります。
会社の求人サイトで、会社が採用している労働時間制、週あたりの労働時間、時間外手当の有無について何も記載がない場合には注意が必要です。
もし労働時間や時間外手当の記載がなければ、その会社の勤務時間は労働基準法の法定労働時間と同じ1日8時間、週40時間以内と考えることもできますが、労働時間制や労働時間もはっきりしない、法定労働時間を超えて勤務した場合に時間外手当が支払われるのかもわからないような会社はブラックと疑ってみたほうがいいです。
塾業界では「1年単位の変形労働時間制」を社員の労働時間として採用している会社が多いですが、求人サイトで会社が採用する労働時間制、週あたりの労働時間数、時間外手当についての記載がないか曖昧な場合には、その会社への入社は避けたほうがよいと思います。
固定残業代の有無
固定残業代とは基本給もしくは各種手当の中に、あらかじめ一定時間の残業代(たとえば1か月あたり20時間まで)を含ませておく制度です。こうすることで一定時間までなら残業時間の集計や残業代の計算などにかかる手間が軽減されます。
残業代が賃金の中に最初から含まれているので、上の例なら法定労働時間を超えて残業しても上限の20時間以内なら残業代は出ません。もちろん残業しなかったとしても固定残業代が減額されることはありません。
この制度では毎月の残業代が賃金に上乗せされているので、一見すると月額賃金が高くなり、求人サイトを見た求職者が「他社よりも給与が高い」と錯覚しやすいのも事実です。先日、初任給40万円で話題になった某アパレル企業でも、毎月80時間分の固定残業代を含めての額でしたね。
現在の職業安定法では、求人サイト等では、固定残業代に含まれる残業時間数とその金額を明示するよう義務付けられていますが、固定残業代をめぐるトラブルは今でも発生しており注意が必要です。
求人サイトに固定残業代制が記載されてないのに、もし入社後に基本給や手当の中に残業代が含まれていると説明されたら、職業安定法違反となり完全にアウトです。違法行為なので会社が罰則を受ける可能性もあります。
したがって、会社の求人サイトに固定残業代の記載がない場合でも、会社説明会などで「固定残業代の有無」を必ず会社に確認すべきです。説明が曖昧ならその会社への入社は避けるべきだと思います。
また、求人サイトに「固定残業代あり」と記載され、対象となる残業時間や金額が表記されている場合は、固定残業代の上限時間を超えて働いた場合やそうでなかった場合の条件が書かれているはずです。
もしこれらの条件について記載がない場合は、固定残業代に設定される残業時間を超えた部分の残業代は支払われるのか。残業した時間が設定未満でも減額されないのかを入社前に必ず確認しましょう。
残業代は労働基準法上支払われるのが当然だし、固定残業代の趣旨を考えれば上限時間を超えていなくても減額されないのは当然です。もし会社の説明が曖昧ならその会社への入社は避けるべきです。
試用期間・期間中の労働条件
現在の職業安定法では、試用期間中の労働条件についても明示するよう規定されています。試用期間がある場合、期間はいつまでか。また試用期間中の労働条件(待遇)についても記載が必要になっています。たとえば「試用期間あり 期間6か月 期間中の待遇は正社員に準ずる」といった形です。
求人サイトで、試用期間について何も記載がない場合は「試用期間なし ⇒ 入社後即本採用」と解釈もできますが、新卒入社の場合、試用期間がまったくないのは少し疑問です。入社前の会社説明会などで必ず確認すべきで、説明が曖昧ならその会社への入社は避けたほうがよいと思います。
もし求人サイトに試用期間の記載がなく、会社説明会でも説明されなかったのに、入社後「試用期間は1年。待遇は契約社員」などと書かれた契約書が配布され記名・捺印を求められた場合は職業安定法違反となるので、すぐに労働基準監督署か近隣のユニオンに相談下さい。違法行為なので会社が罰則を受ける可能性もあります。
したがって、求人サイトで、試用期間の長さやその期間の労働条件(待遇や雇用身分)についての記載が曖昧ならば、この会社への入社は避けたほうがよいです。
余談ですが、経営者の中には、正社員の解雇は難しいが、本採用前の試用期間中なら解雇は簡単にできると思っている人もいますが、これは経営者の理解不足で、たとえ試用期間中であっても労働者の解雇や本採用を拒否するには高度に客観的かつ合理的な理由がなければできません。
以上、ブラック企業に入社しないために会社の求人・採用情報のどこに注意すべきかを3回にわたって説明してきました。就活生や転職活動中の皆さんはこれらの注意点をよく頭に入れ、ブラック企業の「求人詐欺」に引っかからないよう、会社選びを慎重に行いましょう。