フリーランスを強要された時の対処法

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前回の『フリーランス契約の罠』では、会社と業務委託契約を結び「個人事業主」としてフリーランスの立場になると、著しく不利な状況で働くことになり、会社に言われるまま安易に業務委託契約を結んではいけない理由を具体的なデメリットを挙げて説明しました。

今回は、会社が業務委託契約を強要してきた場合の対処法について書きます。これは教育業界で働く人だけではなく、どんな業界・業種でも活用できます。

ただし、あくまで会社と業務委託契約を結ぶ前の段階、つまり「使用者(会社・経営者)に雇用される労働者」の立場にあるときの対処法になります。この対処法は会社とのトラブルは避けられないことも理解して下さい。

業務委託契約の強要は違法!

そもそも会社が、従業員(正社員、契約社員、アルバイト等)に対して「お前は会社と業務委託契約を結んで個人事業主になれ!今後はフリーランスの立場でうちの会社で働け!」と有無を言わさず従わせることは法律上可能でしょうか?

もちろんこれは民法、労働契約法、労働基準法に照らせば違法です。会社は法律上こうした契約を従業員に強要することはできません。なので会社も表向きは「提案」の形を取ります。この点をよく覚えておいて下さい。

大前提として、従業員つまり雇用される労働者が業務委託契約を結んで個人事業主に転換する場合、それまでの働き方とは待遇・保障等が大幅に変化します。したがって会社には個人事業主に転換した場合のメリットやデメリットを細かく説明する義務があり、最終的に労使双方が納得し文書で合意する必要もあります。

しかしブラック企業の場合、個人事業主に転換しフリーランスになった場合どうなるのかの説明をほとんど行わず(何も変わらないと嘘を言うケースもある)、業務委託契約の内容について話し合うどころか一方的に業務委託契約書を送り付け、これにいついつまでにサインしろと迫ってきます。

そして「これにサインしなければクビだ!」「サインしなければ賃金を大幅カットだ!」「売上が落ちているのに責任を感じないのか!」などと精神的圧力をかけてサインを強要してきます。これらはすべて今までの相談者から聞いた話です。

それでは、もし会社から業務委託契約を強要され、会社の対応に不安や恐怖を感じた場合には、労働者はどうすればよいのか?対処法は簡単です。会社からの業務委託契約の提案を断ればよいだけです。この段階では、会社はあくまで「業務委託契約を結ばないか」と提案しているだけです。

会社が不利な内容の労働契約を従業員への説明も曖昧なまま、契約内容についての話し合いも行なわずに強要することは違法です。会社の業務委託契約の提案には労働者にも断る権利があることをよく覚えておいて下さい。

それでも会社がしつこく業務委託契約の締結を強要してきたら「これは会社からの提案ですか?それとも強要ですか? 」と問い質します。その上で「すでにお断りした件について、しつこく要求すると強要罪になりますよ!これ以上言うならこちらも出るとこ出ますよ!」と言ってやりましょう。

それでもまだ会社が解雇や賃金の大幅カット等をちらつかせて脅してきたら、そのときは労働基準監督署、労働局、地域のユニオン(一般労働組合)に相談して下さい。この段階なら立場は「雇用される労働者」なので、監督署なども対応できます。また「労働者」ならユニオンでも普通に対処・解決できます。

同時に、業務委託契約を強要する就業規則上の根拠の提示や、他の社員との整合性(対象は自分だけなのか? 他の社員はどうなのか?)なども会社から聞き出しましょう。ブラック企業には就業規則はないに等しい場合が多く、あっても社員に周知されていないことも多いです。就業規則上の根拠がない場合には、会社の命令に従う義務はありません。

会社からの業務委託契約を断る理由として、これらの理由があれば正当化できます。同時に客観的な証拠(メール文や録音記録、メモなど)を手元に保存しておくことも大切です。自分にとって有利な内容(会社には不利な内容)の証拠を集めておくことです。

有利な内容で契約を締結するのがベスト

もし、会社が業務委託契約の締結を強要してきたら、労働者は個人事業主に転換する前に、労働条件や報酬等について会社に要求できます。なぜなら業務委託契約は会社と個人事業主が双方協議した上で、対等な立場で締結することが求められているからです。

これを読んでいる人は、雇用されていた会社に、今度はフリーランスとして勤務するのは嫌だという人が大部分と思いますが、前述した「業務委託契約を断る理由」を補完・強化するためにも、会社と業務委託契約を締結する前に、報酬や労働条件の交渉をやっておくのもありだと思います。

一番やってはいけないことは、会社と業務委託契約の内容についてまったく交渉せず、会社が提示した条件をそのまま受け入れてしまうことです。

特に長年そこで働いてきた人なら、自分の労働条件や報酬等を会社と交渉して決めることは思いもよらないことかもしれません。

しかしフリーランスで仕事をする場合、相手と交渉して労働条件や報酬を決めることも自己責任でしっかり行う必要があります。納得できない点を残しておくと絶対後悔します。大卒後10年以上フリーランスとして予備校業界で働いてきた私の経験からも言えます。

業務委託契約を結びフリーランス(個人事業主)に転換すると、さまざまなリスクやデメリットがあります。したがってフリーランスで働く場合には、起こり得るリスクをできるだけ軽減し、かつ自分に不利益のない契約になるよう交渉することが大切です。

下に、学習塾に勤務し正社員から業務委託に転換した場合の契約条件の一例を挙げます。学習塾で働く人が会社と交渉して決める最低限の契約条件を想定しています。業務委託契約を強要された時に、これをモデルに会社と交渉してみて下さい。

1.正社員時代の年収を基準に、その3割増し以上の報酬とする。社会保険料の負担分も踏まえた上で報酬額を決める。たとえば年収400万円(手当・賞与込み)なら、報酬額は年間520万円以上になるよう交渉する。必ず従来の収入水準以上の報酬額にする。

2.契約期間を長期(1年以上)に設定し、その期間中は会社の都合で一方的な労働条件の変更や報酬の減額等をしないことを契約に含める。

3.勤務する校舎の生徒数や売上がアップした場合は、それに応じて報酬にインセンティブを追加することを契約に含める。

4.講師の場合、勤務時間は夕方16時以降とする。社内会議などに参加する場合や、門配や保護者会などの業務を勤務時間外に実施する場合、別途報酬に加算する。また委託業務の範囲を明確に定め、それ以外の業務は行わない。する場合は別途報酬に加算する。

5.契約期間中の他の学習塾での兼務禁止といった、自分が働く上で不利な条件は削除するよう交渉する(フリーランスは一つの職場に専念して働く義務は原則ないから)

上のモデルを念頭に置いて交渉すれば、会社は業務委託契約を撤回してくるかもしれません。なぜなら会社の目的は「人件費のリストラ」だからです。

実は、雇用する労働者を業務委託に切り替えた場合、会社にもデメリットがあります。人件費を下げるどころか、かえって支払う報酬が増え、労務管理などが不安定になるケースも多いのです。アホな経営者はこうした点をまったく想定してないですが・・

このように、業務委託の契約内容について会社と何度か交渉して「契約条件について協議した結果、合意できなかったので会社の提案はお断りします」と答えておけばよいのです。

こうすれば、会社からの提案(強要?)を断った理由が「業務委託契約での報酬・労働条件を労使双方で話し合ったが合意に至らなかった」となるので、会社とトラブルになっても断った理由を正当化できます。

会社と争いたくない・・甘い考えは捨てる

上の対処法がうまくいっても、これらは「時間稼ぎ」でしかありません。なぜならブラック企業は、業務委託契約を労働者が拒否した場合、その後あらゆる手段を使って嫌がらせをしてくるからです。したがって早めにその対策を講じる必要があります。

対策は次の2つです。逃げるか抵抗するかの2択となります。これ以外にはありません。

1.できるだけ早急に次の転職先を探し、その職場から逃げる。

2.ユニオン(一般労働組合)に加入し労組の力を借りて会社と闘う。

相談者の中には「会社とのトラブルを避けるため、いったん業務委託契約を結んで個人事業主になり、フリーランスとして働く間に転職活動をして別の会社に正社員として転職すればいいのでは?」と言う人もいました。

会社とのトラブルを避けたい気持ちは理解できますが、これは ” 正しいやり方 ” ではありません。なぜなら一時的にせよ嫌々フリーランスになった人が転職しても、好条件で正規雇用してくれる会社がどれだけあるかは疑問だからです。

むしろ現在のフリーランスとしての不利な立場に付け込み賃金や労働条件を買い叩いてくる会社が多いのではないでしょうか。ずっと正社員でしたと嘘をついても転職先での社会保険の切り替え手続きの時にバレます。

したがって「会社と争いたくないから」という理由で、安易に業務委託契約を結んでフリーランスに転換してしまうと、自身の職務経歴(キャリア)にキズがつき、その後の転職や就職活動が著しく不利になる可能性も高いのです。

これはフリーランスへの転換を「脱サラ」と考えるとよくわかります。サラリーマンを辞めて脱サラする人はいつの時代にもいますが、誰もが入念な準備や資金の確保を何年もかけて行いますね。「会社と争いたくないから」という理由で急いで脱サラする人などいないです。

私は「会社から理不尽な仕打ちを受けて辛い立場にあるのに、会社とは争いたくない」と考える人が多いのが不思議でなりません。不本意に会社に従った結果、自分の将来の生活やキャリアに及ぼす影響を改めて考えなおす必要があると思います。

こう考えると、会社から理不尽な仕打ちを受けたとき、労働者がユニオンに加入して労組を作り会社に抵抗することも手段の一つとしては有効です。eisu、ワオ、ウィザスでも、少数の労働者が労組を作り会社に抵抗したからこそ、それぞれの学習塾での職場環境を改善してきました。

働く人も「会社と争いたくないからどんな理不尽な命令でも従う」という考えから「理不尽な命令には断固抵抗し、会社と闘争して職場を改善する」という考えに意識を変えていくべきだと思います。

会社に言われるまま業務委託契約書にサインすることは絶対にやめましょう!

取り返しのつかないことになります!

業務委託契約書にサインする前に、必ずユニオンに相談を!

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