年変形労働時間の注意点 ②

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全国の教育業界で働く皆さんへ。

前回の続きです。第2回では、教育業界だけでなく、多くの企業で採用される1年単位の変形労働時間(年変形労働時間)制度では、どのような場合に時間外労働となるのかを説明します。あわせて注意すべき点も解説していきます。

年変形労働時間制での時間外労働の考え方

1年単位の変形労働時間制を導入すれば、社員をどんなに働かせても残業代を支払わなくても良い。と考える経営者も意外に多いです。年変形労働時間制は「残業しても残業代が出ない」制度だとよく言われますね。

しかし年変形労働時間制でも一定の条件を超えて働いた場合は時間外労働が発生します。当然残業代は払ってもらわなくてはいけません。

年変形労働時間制は簡単に言うと、1年間の対象期間中に、法定労働時間を超えて働いても残業代が出ない日があるという制度なので、設定期間内の法定労働時間の上限を超えて働いた場合は時間外労働となり残業代が発生します

言い換えれば、年変形労働時間制では、1日ごと、1週間ごと、設定された変形期間ごとに定められた法定労働時間の上限を超えた時間が残業時間となります。

年変形労働時間制で残業となるケース

注意点ですが、年変形労働時間制の下で生じる残業代は、毎月の給与で支払われる部分と、変形労働時間の対象期間の終了後の給与で支払われる部分とがあります。年変形労働時間制で時間外労働となるのは、次のケース1~3のいずれかの基準に該当する時間です。以下に説明します。

【ケース1】 1日について

労使協定により8時間を超える時間を定めた日

その定めた時間。それ以外の日は8時間を超えて労働した時間。

【ケース2】 1週間について

労使協定により40時間を超える時間を定めた週

その定めた時間。それ以外の週は40時間を超えて労働した時間。

これを読んでも内容が良く理解できませんよね。ちなみに下線部は労使協定で特定期間等の特別条項が設定されている場合となります。

ところで前回、年変形労働時間制には上限規定があると説明しましたが、再度その内容を見て下さい。労働時間の上限は1日10時間週52時間となっていますね。この上限は独別条項による特定期間中でも変わりません。

すると、特定期間等の特別条項が設定される期間では、労働時間が1日10時間もしくは週52時間を超えた場合は、超過した部分が時間外労働となり、残業代が生じます。

特定期間等が設定されていない期間は、通常の法定労働時間が適用されるので、労働時間の上限は1日8時間週40時間となり、これを超えて労働した場合、超過した部分が時間外労働となり、残業代が生じます。

このケース1・2で生じる残業代(割増賃金)は、毎月の給与で清算される必要があります。

【ケース3】 1年について

対象期間の起算日~終了日までの1年間の総労働時間(2085時間)を超えて労働した時間。ただし上記1・2で時間外労働となる時間を除く。

年変形労働時間で規定される年間総労働時間は2085時間(うるう年は2091時間)です。これを超えて働いた場合は時間外労働となります。

ただし、これはすでにその年度の期間中に清算されているケース1・2で生じた時間外労働を差し引く必要があります。そうしないと「残業代の二重取り」になるからです。

たとえば、ある年度の対象期間中の年間総労働時間が2200時間で、すでにその年度の毎月の給与で清算された残業時間が100時間あるとした場合・・

2200(年間総労働時間数)-100(清算済の残業時間数)= 2100

2100 - 2085(年変形労働時間の上限) = 15 となります。

よって15時間がこの年度で清算されていない時間外労働となり、15時間分の残業代が生じることになります。ケース3で生じる残業代(割増賃金)は、対象期間終了直後の給与で清算される必要があります。

年変形労働時間制での残業のポイント

年変形労働時間制において残業(時間外労働)が生じるのは、以下のケースとなります。皆さんは会社に騙されないように、これらのポイントをしっかり頭の中に入れておいて下さい。

年変形労働時間制においては・・

1日10時間週52時間超えたら時間外労働(特定期間中の場合)

■1日8時間週40時間超えたら時間外労働(特定期間以外の場合)

■1年間で2085時間超えたら時間外労働

■ 残業代は毎月の給与で支払われる(ケース1・2の場合)

■ 残業代は年1回まとめて支払われる(ケース3の場合)

■ 残業代の割増率は通常の残業と同じ

次回は年変形労働時間制下で生じる残業について、知っておくべき重要な注意点を説明します。

 

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