ブラック企業の有休を取をらせない方法(後編)
「ブラック企業の有休搾取の方法(前編)」の続きです。初めて読む方は前編からお読み下さい。
前回はブラック企業が従業員に年次有給休暇(有休・年休)を使わせない方法として、主に労働基準法違反となるケースを説明しました。でも合法的な制度を利用して、従業員に有休を取らせないようにする方法もあります。
計画年休制度を悪用する
計画年休制度とは大部分の人にとって聞きなれない言葉だと思います。
この制度は有給休暇の計画的付与とも呼ばれ、労働者の持つ有給休暇日数のうち一定の日数をあらかじめ休日として年休の中に組み込んでおくことで、労働者に有給休暇を計画的(強制的)に取得させます。
こうすることで労働者の有休消化率を ”表面上は" 良くすることができます。そのかわり労働者個人が自由に使える有休の日数がその分減ります。
労働基準法では計画的に付与してよい有給休暇は、付与日数のうち5日を超える部分としています。たとえば有休の日数が20日ある人は15日、10日ある人は5日分について計画的に付与することが可能になります。
有休があらかじめ会社の公休日に含まれているため、上の例ではどちらの場合も労働者が自由に使える有休日数は「5日」のみです。
これを悪用しない手はないですね。「うちの会社は計画年休制度を採っているので有休日数は年間5日だ」というロジックで労働者の有休付与日数を大幅に減らすことができます。
eisuでも昔は社員への有休付与日数が最大5日だった頃がありました。不思議に思って上層部の人に尋ねたら「計画年休制度を採っているから」という答えが返ってきました。あの頃は労働法制に無知だったので「へぇー、そうなんだ~」と納得してしまったけどね・・
でも eisuで実施されていた計画年休制度は実は ”偽物” だったことが、労働組合結成後の労組の追及によりバレました w w
その結果、今では法定どおりに有休が付与されます。10年前までは定年後の再雇用社員の有休日数は ”計画年休制だから” という理由で最大5日でしたが、これも現在は法定どおりに改善させました。
このように計画年休制度について労働者が知らないと、会社に悪用され有休の付与日数を減らす口実に使われるケースがあります。これは一見すると労働者の有休日数を合法的に減らす方法のように見えますが、制度の導入には一定の要件があり、これらをクリアしていないと無効です。
「偽装」計画年休制度の見抜き方
2019年に労働基準法が改定され、労働者を雇用する企業は、従業員に対し年次有給休暇(有休・年休)を年5日以上取得させないと罰せられるようになりました。したがって最近では、取得義務のある5日分の年休を計画年休で付与する会社が増えています。
しかしながら、昔のeisuのように、計画年休制度を「偽装」して有休の付与日数を法定よりも極端に減らしている会社も実際には多いと思います。そこで、会社が運用する計画年休制度が「偽装」かどうかを見極めるポイントを説明します。
計画年休制度を会社が実施するためには一定の要件を満たさないといけません。
まず職場で労働者(労働組合がない職場では社員の過半数を代表する者)と使用者(会社)とで労使協定を結び、対象者の範囲や、付与日数、どの日を付与日とするか、付与方法などの細かなルールを決めたうえで、事前に労働者の同意を得ておくことが必要となります。
したがって勤務先の会社が計画年休制度を導入している場合は、少なくとも労使協定があるか。詳細なルールはあるか。計画年休の付与日がいつなのか。制度の内容が社員全員に周知されているか。社員全員がそれに同意しているのか。などを必ずチェックして下さい。
また、この制度では会社がいったん計画的に付与した年休日を労働日に変更することは原則できません。年休日なのに何らかの業務が入っていれば、会社の計画年休制度そのものが「ウソ」である可能性が高いです。
いくら会社(経営者)が「有休の付与日数が少ないのは計画年休制度を採用しているからだ」と言ったところで、労使協定もない。細かい規定もない。社員の過半数を代表する者が誰だかわからない。同意した覚えもない、年休の付与基準日がいつからなのかわからない。年休日に平気で業務を入れてくる。
こんな状況なら、会社の計画年休制度は「ウソ」である可能性が極めて高いです。このような場合には、このサイトもしくは eisuユニオン、ウィザスユニオンの公式サイトから情報提供やご相談下さい。
会社の有休取得妨害は違法行為です!
もし皆さんの勤務する塾の経営者や役員、職場の上長が「有休を使わせない」「有休を取得したら査定にひびくぞ」ということを会議などで発言しているなら、これはれっきとした法律違反行為です。
労働基準法39条では、労働者が有休を取得する権利が認められ、会社(経営者)は従業員の有給休暇取得に最大限配慮をすることが義務として求められています。したがって会社(経営者)が労働者にその自由意思による有休の取得を制限または抑圧するような行為は認められません。
また労働基準法136条では会社(経営者)は有給休暇を取得した労働者に対して不利益な取り扱いをしてはならないと規定しています。
ここでいう不利益な取り扱いとは、会社が有休を取得した労働者に対し、有休取得を理由として、賃金・手当・賞与の減額、懲戒処分、人事評価を下げることはもちろん、有休を取得すると何らかのペナルティを受けると思い込ませることで、有休取得を妨げる命令を出すことも含みます。
つまり労働者の有給休暇の取得に対し、会社がそれを妨害する行為はすべて認められないのです。
こうした行為をやめさせるには、相手の発言内容をICレコーダに記録したり、業務命令や指示として出された場合には、その文書を保存しておくことをお勧めします。そして労働基準監督署に証拠を持ち込んで相談するか、直接私たちにご相談ください。
有給休暇は労働者の権利です。有給休暇を取得することは別に悪いことではないのです。
ワークライフバランスを考えて、上手に使いましょう!